
株式会社uyetでは、VTuber業界の発展とともにVTuberを活用して日本産業を発展させるべく、さまざまな企業様や自治体様と取組を行っています。
この度、弊社では「まちスパチャプロジェクト」の一環で、今年の秋に岡山県新見市様とともにバスツアー企画「にーみーとツアー」を実施させていただきました。またこれまでも岡山県新見市様とふるさと納税やシティプロモーションの取組を実施させていただいております。
そこで今回は新見市移住・定住推進課の安達さんと取組に協力いただいたVTuberの時雨ミトさんをお招きして、これまでの新見市様との取組を振り返る対談の様子を記事にまとめました。
現在VTuberを活用したプロモーションを検討している、新規事業の開発を検討している企業、自治体のご担当者様はぜひ本記事をご覧ください。
今回の対談者
◻︎新見市移住・定住推進課 課長
安達悟
◻︎株式会社uyet代表プロデューサー
金井洸樹
◻︎VTuber
時雨ミト
時雨ミト公式YouTube: https://www.youtube.com/@shiguremito
時雨ミト公式X: https://x.com/mito_shigure

岡山県新見市が抱えていた大きな課題
今回の取組を実施する前に抱えていた課題を教えてください。
安達様:現在もなお、新見市では「人口減少」が最も大きな課題だと捉えています。
新見市は2005年に市町村合併によって誕生し、今年で20周年を迎えました。しかし、この20年間で人口が1万人減少しています。「1万人」と聞いても実感が湧きにくいかもしれませんが、実はこの数字は新見市の総人口の約30%にあたります。
高齢者が多く若者が少ないという現状の中で地域の営みを継続していくためには、「関係人口」の存在が重要だと考え、若年層への働きかけが不可欠ではないかと当時は漠然と考えていました。
若年層をターゲットとした従来手法での情報発信の限界
「まちスパチャプロジェクト」以外に、これまで実施したプロモーション施策はありますか。
安達様:これまではオールドメディアを中心に、年代や地域を絞ることなく新見市のPR活動を展開していました。対面を中心とした昔ながらのやり方をずっとやっていたので、中高年層にしか情報が届かず、効果も見えにくいという課題がありましたね。
また施策を実施した際に振り返りをしっかりできていなかったので、施策の効果計測が漠然となっていました。
金井:つまり施策を打ってもどれくらいの人に情報が届いたのか、どれくらいの人が新見市に興味持ってくれたのかが正しく測れていなかったということですね。
安達様:そうですね。この点は大きな問題だと考えていました。

今回「まちスパチャプロジェクト」に相談・依頼しようと思ったきっかけを教えてください。
安達様:これまでふるさと納税業務を株式会社フューチャーリンクネットワーク(まちスパチャプロジェクト運営での連携企業)さんに委託している関係があり、寄附促進の次なる一手を模索していたところ、「まちスパチャプロジェクト」をご紹介いただきました。
私自身「VTuber」という単語自体は聞いたことはあったのですが、具体的に何をやっている方なのかよく分かっていませんでした。ただ株式会社フューチャーリンクネットワークの担当者の方に熱意を持って「まちスパチャプロジェクト」についてご説明いただき、市としても新たな挑戦という意味で面白いのではないかと思いました。
金井:私たちも様々な企業・自治体様とお話しする機会があるのですが、「VTuberは聞いたことあるけどよくわからない。」といったお声をたくさんいただくので、多くの方が同じような理解度だと思っています。
また当時「まちスパチャプロジェクト」もまだ取組をたくさんしているわけではなかったのですが、そんな中で一緒に挑戦いただいた新見市様には大変感謝しています。
安達様:ちょうど2023年に新たな取組を始めようとしたところで今回のお話をいただいたので、タイミング的によかったのもあるなと思います。ただ皆さんの熱量が高くて一緒に何かやってみたいと思ったのが大きかったですね。
また我々中山間地域の自治体は他の自治体と比較すると遅れをとっているので、どんどん新しいものに取り組んでいかないと関係人口が広がっていかないと思っています。ですので、そういう意味でも「まちスパチャプロジェクト」は非常に新しく面白さを感じました。
ちなみに私の中学生と大学生の娘にVTuberについて聞いてみたのですが、ちゃんと知っていて驚きました(笑)

本取組を進めるとなった際、市役所内や市民の方はどんなリアクションをされたのでしょうか。
安達様:皆さんVTuberの存在を知っている方が多かったからか、意外にもすんなり受け入れていただけて特に苦労したことはなかったです。「あ、そうなの?とても面白い取組だね。」と好意的に捉えていただくことができました。
金井:もうそんな世の中になったんですね…。私は2018年からこの業界にいるのですが、当時はまだVTuberが世の中に100人もいないころで、今の話を当時の私が聞いたらびっくりすると思います。
VTuberさんの配信を視聴している層は、主に10代から30代を中心とした若年層が多いと言われていますが、この世代にとって「市」や「地域」といった存在は、観光地などの断片的な情報は知っているものの、それ以外のことはほとんど知らないのが実情です。
さらに現在はインターネットやSNSのレコメンド機能の発達により、自分から意識的に調べない限り、自分の関心がない新しい情報に触れる機会はますます少なくなっています。その結果、全国には知られていないだけで関心を持たれていない地域が多く存在しているのではないかと思います。
だからこそ、まずは知ってもらうきっかけをつくり、次に「好きになってもらう」ために何ができるのかを考えることが重要であり、その点については私たち自身が自治体の方々と一緒に向き合い、長期的に考えていく必要があると考えています。
今回の施策である「にーみーとツアー」について
今回のバスツアー企画ですが、時雨さんに声をかけたきっかけはなんだったのでしょうか。
金井:昨年新見市様とお取組をさせていただいた際も、時雨さんには本プロジェクトにご参加いただき、配信やSNSを通して新見市について情報発信を行っていただきました。
また時雨さんはこの取組をきっかけに「新見市ふるさと市民」に自ら応募されており、新見市を盛り上げたいという強い姿勢とご縁もあって今回お声がけをさせていただきました。
時雨さんは今回のお話をいただいた時、どのような印象を持たれましたか。
時雨様:元々ふるさと納税に対して関心はかなり強い方でした。ですので、自分でも配信内でふるさと納税について発信したいという気持ちはありましたが、普段ゲーム配信や雑談配信を楽しみしてくださっているリスナーさんはあまり求めていないのではないかと思い、ふるさと納税の話題に触れたことはありませんでした。
ただ心の中では、「めっちゃ面白い制度なのに、なんでみんな使わへんのやろう?」とは思っていましたね。ですので、「まちスパチャプロジェクト」では配信内でふるさと納税の魅力をPRさせてもらえるということで、個人的に非常に嬉しい企画でした。
正直な話をさせていただくと、ふるさと納税で寄附をした自治体名は忘れてしまうことが非常に多くて…こういった経験は、私だけでなく意外と多くの方に当てはまるのではないかと思っています。

ふるさと納税の返礼品の存在だけが記憶に残って寄附をした自治体の名前が記憶に残らないという点は、本来のふるさと納税の趣旨から少し外れてしまっているのではないかと元々実は思っていましたね。
なので、今回のお仕事では新見市さんを少しでも多くの方に覚えてもらえるように、発信活動を行わせていただきました。
金井:実は時雨さんがおっしゃっていた点は僕たちも課題だと思っており、どうすればふるさと納税を通して市の名前や魅力をきちんと覚えてもらえるのかという点は「まちスパチャプロジェクト」の立ち上げや今回の取組につながっています。
今回の取組「にーみーとツアー」はどういった内容だったのでしょうか。
金井:これまでの新見市様との取組では、VTuberさんが出演し観光地や特産品を紹介する漫画制作やふるさと納税の紹介やまちの魅力を紹介するプロモーション配信の実施などを行わせていただきましたが、今回はオフラインバスツアー企画「にーみーとツアー」を実施しました。
VTuberさんがバスツアーの参加者の方に新見市の街を紹介する企画だったのですが、新見市の観光名所や特産品を楽しみながら、参加者の皆さんに新見市の魅力をバスツアーを通して知っていただきました。
バスツアー企画の中では、街中が時雨さんとコラボするといった施策を盛り込みました。例えば、満奇洞の一部を時雨さんカラーにライトアップしたり、親子孫水車の横に時雨さんののぼりを設置したり、ガチャガチャを置いたりなど、様々な施策を実施しました。
安達様:自分もバスツアーにも同行させていただいたのですが、印象に残っているのは市内の鍾乳洞や親子孫水車の照明を時雨さんのイメージカラーに変更されていた点です。普段とは違った印象を感じましたし、VTuberの方と市がコラボしていることを実感しました。


時雨様:非常に素敵に観光地内を飾っていただきました。とても嬉しかったです。
金井:時雨さんから「こういうことをやりたい」という要望をいただいたのもあり、それをどう実現するかを考えて企画作りを行いました。もちろん自治体様のご要望と本プロジェクトの目標達成の上で企画作りを行っているのは前提ですが、やはりVTuberさんのやりたいを実現するのが一番VTuberの取組において効果が出るんですよね。
今回携わってくださった方々のご協力もあり、非常に面白い企画を実施できたのではないかと思っています。
今回の企画を通じて手応えや成果はありましたでしょうか。
安達様:バスツアー自体は昨年から行っており、実は昨年の応募者数がとても少なかったんです。ですが、今回時雨さんと一緒にバスツアーを実施したら、昨年比800%を記録しました。昨年は6名の応募だったのですが、今年は1週間で50名。非常に大きな反響をいただきましたね。
あと数値的な成果としては「新見市ふるさと市民」の登録者数の増加が挙げられます。これまで登録者の合計数は毎年おおよそ100件弱で推移していましたが、現在はそれを大きく上回る伸びを見せていて明確な実績として表れています。また、Xのフォロワー数についても着実に増加しているという状況です。
今回のバスツアー企画の開催前日には市のお祭り(『FAN2025』)が開催され、そこでブースを設けて「まちスパチャプロジェクト」についてPRを行ったのですが、バスツアー前日であるにも関わらず、ツアー参加者の方や時雨さんのリスナーの方が前日から訪れてくださる場面も見られました。
さらに印象的だったのは、市内の小・中学生、さらには高校生と思われる若年層の皆さんが、非常に熱心にブースを見てくれていたことです。これは数値では測れない部分かもしれませんが、若年層に確かな関心が存在していることを実感できました。

金井:毎回工夫と試行錯誤を重ねながら取組を実施していますが、どれほど良い施策や魅力的な場所、価値のあるものがあったとしても、まず関心を持ってもらえなければ取組を実施する意味がありません。
そんな中で地元の方には「VTuber」をきっかけに、「自分たちの市でこんな取組をしているんだ」「自分たちの市にはこんな魅力があるんだ」と自分の地元を誇りに思っていただければ非常に嬉しいです。
また地元の方ではない方にも新見市に関心を持っていただくため、今回の取組は時雨さんの世界観やカラーに合わせて企画設計やクリエイティブ作りを行いました。
いきなり聞いたことがない市の名前を前面に押し出しても、人の心にはなかなか届きません。だからこそ、ユーザーがもともと興味を持っている要素を用いながら、市の情報に自然とつながる形に落とし込めないかを考えながら進めていきましたね。
時雨様:自分のリスナーさんに今回のバスツアーについて話した際、以前新見市さんの取組に参加させていただいていたこともあり、多くの方が「新見市」のことを覚えていました。

自分の好きなものである「ゲーム」「お肉」を絡ませて企画作りを行っていただいて非常に嬉しかったです。
あと今回の取組実施にあたり特設サイトを作っていただいたのですが、自分の要素がふんだんに使われていて、私はもちろん、リスナーさんもめちゃくちゃテンションが上がったと思います。「時雨ミトっぽい!」と言う反応がとても多かったです。
安達様:時雨さんにはバスツアー企画をたくさん盛り上げていただいたと思っています。
新見市は観光地が点在しており、観光地から観光地までの移動時間が長いのがネックになってきますが、バスツアー企画では時雨さんが上手くバスガイドしていただいたおかげで、終始盛り上がる企画となりました。コミュニケーション力と場を盛り上げる力が高く、さすがプロだなと思いました。

今回のバスツアー企画で苦労した点はありますか。
金井:そうですね..正直お話しすると本当に苦労しなかったなと思います。理由は2つあって、1つ目は新見市さんのスタンスが明確だった点で、例えば「これは良いと思う」「これは実施可能・不可能」などがかなりハッキリしているので企画を非常に考えやすかったです。
もう1つは新見市さんが私たちと一緒になって、どうしたら良い企画にできるかを前向きに試行錯誤してくださった点です。自治体さんのご協力が非常に大きくて企画立案から実装まで進めやすかったです。
今回の取組を振り返って
改めて今回の企画を振り返ってみていかがでしたでしょうか。
安達様:今回のツアーを通して強く感じたのは、ご参加いただいたリスナーの皆さんのマナーがとても良い点です。終始落ち着いた大人の対応でツアーを楽しんでいただき、またリスナーさんからも企画を盛り上げよう、良いものにしようという姿勢が感じられて非常に好印象を受けました。
バスツアーの主催者側としても安心して運営できましたし、「また開催したい!」と素直に思えたことが何よりの成果だったと感じています。
今後VTuberのリスナーの皆さんが楽しんでいただける企画の開催や地元の方が楽しんでいただけるようなVTuber企画を、無理のないペースで継続していくことは十分に検討できるのではないかと思っています。
こう思えたのは、時雨さんのリスナーさんたちのおかげです。
時雨様:そう言っていただけて、とても嬉しいです。
金井:今後もまた何か一緒にお取組ができたらと思います。本日はありがとうございました!時雨さんもありがとうございました。
時雨様:ありがとうございました。
