【神奈川県教育委員会・uyet】VTuberの声にのせて「インクルーシブ教育」の認知拡大と理解向上を目標にプロモーション動画を制作

株式会社uyetでは、VTuber業界の発展とともにVTuberを活用して日本産業を発展させるべく、さまざまな企業様や自治体様と取り組みを行っています。

この度、弊社では神奈川県教育委員会教育局様が実施するインクルーシブ教育推進の取り組みの一環であるVTuber出演のプロモーション動画の制作を行いました。

そこで今回は、神奈川県教育委員会教育局インクルーシブ教育推進課事業調整グループの花田様をお招きし、uyet代表プロデューサー金井との対談の様子を記事にまとめました。

現在VTuberを活用したプロモーション実施を検討している、新規事業の開発を検討している企業、自治体のご担当者様はぜひ本記事をご覧ください。

今回の対談者

神奈川県教育委員会教育局

花田竜也

株式会社uyet代表プロデューサー

金井洸樹

神奈川県教育委員会について

神奈川県は首都圏の一角に位置し、北は首都東京都に接し、東は東京湾、南は相模湾にそれぞれ面し、西は山梨、静岡の両県に隣接しています。約900万人の県民が暮らしています。 

神奈川県では共生社会の実現を目指し様々な施策を進めており、教育委員会ではすべての子どもが同じ場で共に学び、育つことができる「インクルーシブ教育」の実現に向けた取組を進めています。 

そうした取組を一層推進していくためにも、多くの県民の皆さまに本県の目指す教育の在り方を知っていただく必要があると考えており、インクルーシブ教育推進課では、教育現場における実践・研究と並行して、様々な普及・啓発活動に取り組んでいます。

インクルーシブ教育について

ー神奈川県が推進しているインクルーシブ教育について教えてください。

花田:神奈川県では共生社会の実現を重要な方針として掲げており、教育分野ではその具体的な取り組みとしてインクルーシブ教育を進めています。

私たちはすべての子どもが地域の小・中学校で共に学べる環境づくりを目指しており、障害の有無や外国籍、LGBTQ+など関係なく、皆が同じ場で学ぶことに大きな価値があると考えています。

日本の教育ではこれまで特別支援学校や支援学級など、子どもに合わせた学びの場が用意されてきました。ただその一方で「共に学ぶ姿」が十分に実現していないのが課題です。だからこそ、私たちは地域の学校で多様な子どもたちが一緒に過ごすことの意味を多くの人に丁寧に伝え、共感を得ることが必要だと感じています。

幼い頃から異なる文化的背景や特性を持つ仲間と関わることで、子どもたちは自然と気づきや理解を深めますし、それが将来のコミュニケーション力にもつながると考えています。

インクルーシブ教育は単に同じ教室で学ぶというだけでなく、共に育つ経験そのものが価値になると思っています。今後も多様な子どもが分け隔てなく学べる環境づくりとその意義を社会へ伝える取り組みを進めていきたいと思っています。

ーインクルーシブ教育を周知していくにあたって、これまではどのような手法で周知活動を行っていたんですか。

花田:インクルーシブ教育を広めていく上でまず大きな課題になっているのが、「インクルーシブ教育」という言葉自体の認知度が低いという点です。

当初は教育に対して関心の高い保護者や当事者、そして教員や教育関係者に理解を深めてもらうことが重要だと考え、横浜や海老名など地域の文化会館を会場にフォーラムを開催し、インクルーシブ教育の概要や期待される効果を直接説明して、地域の関係者に丁寧に広げていくことを重視していました。

近年は国レベルでもインクルーシブ教育という言葉が使われるようになり、教育現場では徐々に浸透しつつある言葉となってきました。しかし、その一方で、実際に教育を受ける子どもたちやその保護者たちへどう届けるかが新たな課題になっています。

そこで、現在は「教育についてはあまり詳しくはないけど、インクルーシブ教育について聞いてみたい」という方々にも届くよう、よりオープンな形で情報を発信しています。例えば、公共交通機関のデジタルサイネージを活用して多くの人の目に自然と入るようなアプローチを進めています。

こうした取り組みを通じて、インクルーシブ教育の理解と関心を社会全体に広げていきたいと考えています。

インクルーシブ教育に関する課題

ーuyetにご依頼いただくまでにどのような課題を抱えていたのでしょうか。

花田:私たちのプロモーションはこれまで対面での説明会や研修の実施が中心でしたが、こういった施策は正直、若年層には情報が届きにくく、これが一番の課題でした。

よって、SNSなどを活用してオンラインで情報を発信することにより、従来の対面中心のプロモーションからの脱却を目標にプロモーション施策を検討していました。

その一つとして、令和6年度からメタバースを使った新しい形のイベント開催を開始しました。

昨年から実施している本イベントですが、メタバースであればホール等の大きな会場を借りて講演を開く必要がなく、従来のオフラインでの形式よりも話題性が生まれやすい点、また参加者同士が気軽に意見交換できる点からプロモーション効果が高いと考えました。

また、会場規模等の物理的な条件にとらわれず、効率的に広く情報を届けることができるため、費用対効果の点でも大きく期待をしていました。

しかし、実際にメタバースでイベントを実施してみると、集まる層がこれまでのオフラインでのイベントとは大きく違うとともに、ただイベントを開催するだけでは若年層に情報が伝達できず集客に繋げることが難しいことが発覚しました。

VTuberを起用するとなった理由とは

ー課題解決のためにVTuberを起用しようと思ったのは、どのような理由だったのでしょうか。

花田:私の家族が「VTuber」のことが好きで、それをきっかけにとあるVTuberさんの動画をみる機会があったんです。

その際に感じたのは、VTuberは強いキャラクター性を持ちながら活動内容のテーマが特定のものではないこと。そのことから、VTuberはタレントとして柔軟性があり、幅広いテーマやコンセプトに自然に溶け込めることがわかりました。

当時ちょうどメタバース上でのインクルーシブ教育に関する新しいプロモーションイベントの開催を考えていて、VTuberコンテンツは話題性があり参加者の興味を引きつけやすいと思いました。またVTuberを起用することで、今回の取り組みに自然な臨場感や楽しさを加えられるのではないかと感じたのもあって強く興味を持つようになりました。

ーそんな中でuyetにご相談いただいた理由を教えていただけますか。

花田:Web上でVTuberについて調べる中で、たまたまuyetさんが出されている「VTuber事務所カオスマップ」を見つけたんです。最初はVTuberについて何も知識がなかったので、VTuberに知見があるuyetさんのお話を一度聞いてみようと思い、ご相談させていただいたのがきっかけでした。

当時はどのVTuberがどんなキャラクターなのかを把握できておらず、タレントの方にどうやってお声がけをすれば良いのかもわからず、正直途方に暮れていました。そんな中でカオスマップをきっかけにuyetさんの公式サイトを拝見し、「VTuberに関する相談ができる」とサイト内に明記されていたのを見て、まさに私たちが求めていたサポートだと感じましたね。

金井:私自身は黎明期からVTuber業界に携わっていて、正直こういう公的な方々にまでVTuberの存在が届くとは思っていませんでした。ですので、ご興味を持っていただいた限りは最善を尽くしたいと思っていました。

今回の取り組みの内容について

ー具体的にはどのような取り組みをされたのでしょうか。

金井:今回弊社ではイベント参加の動機作りやインクルーシブ教育に関心を持ってもらえるきっかけを作れるよう、インクルーシブ教育をPRする上でのVTuberタレントのキャスティングやVTuber出演の動画の制作、台本作成などに携わらせていただきました。

今の若年層はエンタメを吸収する上で動画コンテンツに慣れていたり、ショート動画を普段からよく見たりするので、真面目なお堅い雰囲気の動画コンテンツには少し抵抗があります。動画の冒頭5秒で切られてしまうこともあるくらいなんです。

どういう動画内容にするかや冒頭でのテーマの切り出し方がとても重要になってくるため、冒頭で動画に興味を持ってもらえる部分をいかに作り出せるかが私たちの今回の使命だと思いました。

花田:確かに、これまで動画を出すとなると私たち職員が動画に出演することが多かったのですが、それだとどうしても堅苦しく見えてしまうんですよね…。

インクルーシブ教育に対する「難しそう」という印象も覆したく、VTuberさんのキャスティングには期待をしていました。

ーキャスティングについて重視したポイントはなんだったのでしょうか。

金井:今回利用シチュエーションがほぼ決まってる状態でご相談いただいたので、逆にご提案内容を考えやすかったというのがあります。

まずご提案内容を考える中で、インクルーシブ教育の取り組みの認知拡大ではなく、子どもたちがインクルーシブ教育に対してしっかりと興味を持てる形にしてあげられるかを重視しました。

人間は全く知らない存在や自分と接点がない存在に興味が持てないことがほとんどで、今回動画のターゲットの中には普段VTuberに慣れ親しんでいない人もいらっしゃると思い、そういった方にも興味を持ってもらえるようなVTuberタレントをキャスティングさせていただきました。

また取り組みを進める上で、ステークホルダーへの説明がしやすいキャラクターをキャスティングすることも意識しましたね。

行政での取り組みということもあってキャスティングの際は一般企業での取り組みとはまた違った点を考慮する必要があり、行政の方や教育に関わる方、親御さんやお子さんなど、皆さんが親しみを持てて安心できるタレントさんを選出するようにしました。

花田:その点は、私たちも取組を行う中で最も気を配っている部分です。

特に起用させていただく方が普段どういった活動をされているのか、どういったお考えをお持ちなのかなど、丁寧にリサーチや本人へのヒアリングを実施し、その上で課として依頼するかどうかを慎重に判断します。

また行政が施策を打つとなると、常に各方面への説明責任が問われます。

「現状どんな課題があるのか」「その課題を解決するために、私たちはなぜこの手法を選択したのか」、また「その手法によってどんな成果が見込めるのか」、「最終的にその成果が現状の改善にどうつながるのか」などの一連の論理を丁寧に整理して説明しないといけないので、ロジックの整理は非常に重要になってきます。

金井:弊社ではこのようなキャスティングを行う際は、ただ宣伝効果が高いからという安直な理由で起用するタレントを決定しないように意識しています。

キャスティングの際に重要なのは「なぜこの方を起用するのか」という文脈。その方を起用する意味やその方が起用された際の役割がきちんと示せるかどうかはクラアント様にご提案する前にまず問うようにしています。

一方で、起用するVTuberさんがリスナーさん、他のVTuberさん、取り組みに関わる企業様に対しては、「我々は〜〜〜という理由で今回のプロジェクトに取り組んでいます。」と説明ができるような文脈作りを行っています。

つまり、どの視点から見ても納得できるような説明を、私たちだけではなくご担当者様やVTuberの方もできるようにキャスティングを実施することを弊社では時に意識していますね。

花田:実際ご紹介いただいたVTuberさん2名は、課で説明を行う際に非常に説明しやすかったです。ステークホルダーへの説明を前提とした上でキャスティングを行っていただいていた点は本日初めて聞かせていただき、非常に好感を持てました。本当にありがたいです。

金井:今回ご協力いただいたVTuberさんもSNS上で「こうした活動に関われて本当にうれしい。」「少しでも貢献できれば…」というようなとても嬉しい発信を行ってくださりました。

VTuberさん自身にも進んで本取り組みにご参加いただいたとともに、自身のSNSで自分がこの取り組みに参加する理由や取り組みの説明などをしっかりお話しいただきましたね。

花田:私たちが取り組みを進めるとなると、VTuberについての知識不足に加えて、自分たち視点にこだわりすぎてしまうことも多く..。VTuberさんがどんなお人柄なのか、日々どのような活動されているのか、なぜ皆さんが発信活動を行うのかまで、当初は把握しきれないところがありました。

私たちの視点では見えにくい部分をuyetさんにご丁寧に説明いただき、進行を行う上で助けていただき、時間がない中でしたがスムーズに取り組みを進めることができたと思っています。

VTuberを起用してプロモーションを行った感想

ー今回VTuberさんを起用して動画を制作しプロモーションを実施しましたが、いかがでしょうか。

花田:すごく新鮮な気持ちになりましたね。動画の内容は日頃から私たちが発信している内容とほぼ同じだったのですが、いつも私たちが発信していることをVTuberさんが発信していること自体に非常に新鮮さを感じました。

また私たちが情報を発信する際の課題であった「堅さ」がVTuberさんのお力をお借りすることで和らぎ、情報の受け取り手に伝わりやすい形に加工処理されていた点はとても素晴らしいと思いました。

金井:VTuberさんは長時間配信を行うことが多いのですが、視聴者が見やすい方法でいかにコミュニケーションを取れるかを常に意識しています。なので、VTuberさんは受け取り手が受け取りやすい話し方を行う能力に長けています。

今回の取り組みに関してプロモーション効果や周りからの反響はありましたでしょうか。

花田:県教委のトップである教育長は新しい取り組みを行うことに前向きな方なので、今回の取り組みに関してしっかりご理解いただき、非常に好意を持っていただいていました。また他の職員の方からも「良い取り組みだよね。」とのお声をいただき、前向きに評価していただけたと感じています。

また昨年も同じイベントを開催しましたが、昨年と比較すると今年は長期間開催できたこともあり、約10倍弱の来場者数を記録しました。今回VTuberさんの起用により、多くの方にプロモーション動画を見ていただけたことは、この取り組みとしては頑張ったのではないかなと思っています。

イベント参加者の方からは基本的に「説明に親しみが持てた」などの高評価をもらった一方、「掛け合いで説明してくれたら楽しく見られる」という声もありました。VTuberコンテンツで想定される双方的なコミュニケーションは今後ぜひ考えてみたいと思っています。

今回の企画を実施し明確な課題をキャッチアップできたので、それもまた大きな収穫だと感じております。

今後の展望について

ー今後VTuberを起用してやってみたい取り組みはありますでしょうか?

花田:まず企画の構想の段階からもっとVTuberさんらしさを出していれば、もっと面白い企画ができたと考えています。今回はすでに企画内容がほぼ決まっている状態でuyetさんにご相談をさせていただいたため、もっと早期からご相談できればよかったと思っています。

次回はVTuberさんの強みである双方向的なコミュニケーションを取り入れながら、コンテンツを作ってみたいですね。

他にも年間でVTuberさんとともに取り組みをさせていただくことも今後検討できる部分だと思っています。神奈川県のインクルーシブ教育推進課や教育委員会の“公式アバター”的な存在としてVTuberさんを起用させていただくと、非常に面白い取り組みになるのではないかと。

金井:とてもいいですね。

花田:あとは対面のイベントでもメタバース上でのイベントでも、ターゲットに情報を伝達する上でより効果的な手法を模索する必要があり、試行錯誤する中で、今後はリアルとデジタルを組み合わせて若い世代にも届く柔軟な情報発信へ転換していきたいと考えています。

その上で、uyetさんから色々な知見を教えていただきたいと思っています。これからもよろしくお願い致します。

金井:こちらこそ、よろしくお願い致します。本日はありがとうございました!