VTuberを活用した広報活動や地域の盛り上げが行われる事例が、2023年から急激に増えています。
大きな経済効果を生んでいるVTuber活用を見て、自社でも取り組みを検討している方も多いと思います。
しかし、費用面や詳しい契約の結び方は、どのような業界でもフルオープンになっているものではありません。特に成長の早い業界であれば「よく分からない部分が多いこと」に予算を割くという決断ができずに悩まれることでしょう。
この記事では企業・事業者のみなさまが初めてVTuberと一緒に企画を行う際に知っておきたい契約方法についての概要、VTuberを起用する際に契約前に注意したいポイント解説いたします。
あくまで、事前に注意したいポイントを解説する記事となりますので、実際の契約書や法律文書は、必ず弁護士などの監修をもって完成させましょう。
株式会社uyetでは、自社でVTuberをキャスティング・起用したマーケティング企画を3年以上行っております。
すぐVTuber企画をご相談したい事業者のみなさまは、ぜひお気軽にお問い合わせください。
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ご予算や商品にあわせて最適な企画設計とVTuberのキャスティングを行います。
VTuberをキャスティング・雇う際の主な3つの契約方法
VTuberを起用したプロモーション・PR企画を行うからには、VTuberの皆さんに安心して働いてもらうために「契約」を結ぶ必要があります。
企画を行う企業としても起用するVTuberの方とはほぼ初対面であることが多いはず。ともに企画を成功させるパートナーとしてVTuberに活動してもらうためにも雇う側は、依頼内容を整理ししっかりと契約書を準備しておく必要があります。
キャスティングするVTuberが事務所に所属している場合は、事務所と契約を結ぶことになります。契約書の細やかな内容については弁護士などの専門家を交えて、事務所と相談しながら締結することが望ましいでしょう。
- 請負契約、委任契約
- 雇用契約(準委任契
- タレント専属契約
1.請負契約・委任契約:一時的なPRや単発案件など
開催のたびに起用するVTuberが変わるような単発の案件や一回きりの企画など、短期的な契約を行う際によく使われる契約方法です。
●請負契約とは
業務委託契約の一種で、依頼された仕事の完成を約束し、その対価に報酬を支払う約束をする契約です。
原則として、仕事を依頼する人と実際に業務を担当し仕事を完成させる人との間で結びます。
●委任契約とは
(民法第643条)より引用すると、以下のことを約束する契約のことです。
委任は、当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生ずる。
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089
法律行為がポイントになり、例として「家族にコンビニで買い物(売買契約)を頼む(委託)」がよく上げられます。
注意点としては、報酬に関しては別途定める必要があるということと、雇用契約よりも雇われた側に広い裁量権があることも特徴です。
2.雇用契約・準委任契約:事務所契約、長期の案件
VTuberを長期の契約、または期限を決めない形で契約を結ぶ際によく使われる方法です。特に雇用契約は、事務所やプロダクションへ所属する際にも使いやすい契約方法といえます。
●雇用契約の場合
VTuberは雇用主のもとで働くことになり、その対価として雇用主は賃金を支払う約束をする契約です。耳なじみもあり、イメージがしやすい契約方法といえます。
社員・スタッフ、アルバイトの雇用と同じように就業規則や事前に決められた取り決めに、原則従ってもらう必要があります。就業の様子や活動に対して指導や注意といった行動が契約上行いやすいのもメリットでしょう。
●準委任契約とは
業務委託の一種である契約のことで、特定の業務を遂行することを定めた契約です。
重視されるのは「業務を遂行すること」であるため、業務遂行で得られる結果や成果物の完成に対する責任追求を求めることはできません。
3.タレント専属契約
上記の契約体系が入り交じった、芸能事務所などが所属アイドルに対してよく使う契約方法です。
内容は事務所や業界によってさまざまな形があります。
そのため、自社にとって長く使える契約書のフォーマットを事務所やプロダクションの立ち上げと合わせて準備しておく必要があります。VTuberに依頼する活動内容や給与形態など事前に決めるべきことを整理して、専門家の意見をもらいながら作成しましょう。
契約書を自社で作る場合と、契約書を自作しなくても良い場合がある
VTuberをキャスティングする場合に契約は必須です。
しかし「契約書」を自社で用意する必要がある場合と、取引先のVTuber事務所などが持っている契約書の内容を元にして、協議する場合があります。
●契約書を自作する必要がある場合
- 個人VTuberを起用したい場合
- 自社で専属のVTuberを起用したい場合
- VTuber事務所、プロダクションを立ち上げる場合
- VTuberを起用して成り立つビジネスをしている場合
●契約内容を協議して締結する形で済む場合
- VTuber事務所や代理店などと契約を結ぶ場合
自社で決められた契約書を持って契約に望めることが一番良いですが、初めてのVTuber起用の企画や新規事業の取り組みの場合は、まだ契約書の内容が定まっていないことも多いかもしれません。
また企画の内容や今後の展開予定によって、自社にとって長く使えて事業内容に沿った契約書を作る場合、法律の専門家とVTuber業界の専門家を交えて企画から練っていくことが、多くのリスクを減らせる方法といえます。
オーディションや公募からVTuber起用を行う場合、利用規約なども必要
地域公認のPR担当VTuberと言えば「茨ひより」さんを思い浮かべる方も多いでしょう。
彼女の活躍に続くように、地方や自治体がPR専門のVTuberを制作、演者を募集することも増えてきました。
その際には、VTuberを演じる演者との契約以外に、利用規約や二次利用のガイドラインなどを用意する必要があります。また公にはしないものの、演者や行政内で利用の可能範囲や活動をしてもらうかのレギュレーションも決められているはずです。
また募集する際のキャラクターデザインの権利(知的財産)の扱いについても、募集する際には注意事項として取り決めをしておきましょう。
▼2024年3月にデビューしたばかりの奈良県公認広報担当VTuber
2024年3月には奈良県広報担当VTuber「奈々鹿(ななか)」さんがデザイン公募、愛称公募を経てデビューしたばかりです。しかし公式サイトを見ると、まだ利用規約や利用に関するガイドラインは準備中のようです。(※2024年3月記事執筆時)
このようにVTuber活用に取り組む自治体が今後も増えてくることが予想されます。これから本格的な活動が始まる事例は、ぜひ応援をしながら成長の過程を見ておくのがオススメです。
この他にも、地域や自治体でのVTuber活用事例が知りたい方はこちらをご覧ください。
VTuberを雇う・キャスティングする際に気をつけること
初めてVTuberを活用した企画の実施や、VTuberをキャスティングして案件を依頼する場合に、事前に気をつけて起きたいことをまとめます。
VTuber業界には事務所に所属している方や、別に本業があり副業としてVTuberを行っている方(兼業VTuber)や未成年の方など、さまざまな世代・状況の方が混在しています。
事務所などを挟まずに個人VTuberを起用したい場合は、依頼側がレギュレーションまで整える必要があるため、事前準備はとても大変です。
しかし、これからVTuberと長くともに企画や事業を成長させたい場合や、自社の活動に専念して安心して活動してもらうにはもっとも重要ですので、ぜひ確認してみてください。
契約書は、弁護士などの専門家を交えて書面にする
契約書は双方で条件に納得したと見なす書類です。
弁護士などの専門家を交えて、しっかりした契約書のフォーマットを作ることが重要です。
特に自社事業や自分たちがVTuberの企画から制作まで行う場合は、利用規約や二次利用の範囲など、VTuberに活動をしてもらう契約以外にも複数の取り決めが必要になります。
VTuber事務所やキャスティングの専門企業を間に挟んでやりとりを依頼する場合にも、契約書の内容に不安があれば、必ずそのまま了承をせずに専門の士業の方からも意見を仰ぎましょう。
個人VTuberをキャスティングする場合、契約書は必須
事務所などに所属していない個人のVTuberを雇う・起用する場合はVTuber自身と契約を結ぶことになるため、契約書についてしっかり確認してもらう時間をとりましょう。
一方的な条件を押しつけては、トラブルになった場合に指摘される要因になりかねません。 相手が個人だからと、相手に不利過ぎる条件を押しつけようとしたり、企業として容認できない対応をするのは炎上リスクが高い行為です。
VTuber同士の交友ネットワークで情報は伝わってしまいますし、契約書を通じて相手とコミュニケーションや意思疎通を図り、お互いに良い仕事をするために使っていきましょう。
本人確認・年齢確認ができない、連絡手段がない人は避ける
VTuberはネット上でアバターとキャラクター名を使って活動をするバーチャルYouTuberという架空の存在。ほとんどの人が実名や年齢などを公表せずに活動しています。
しかし報酬が発生する仕事を依頼するからには、VTuberの中の人・演者の本人確認が必要です。年齢確認や源泉徴収の送付先となる住所や氏名が契約を結ぶ際には、明らかにしてから契約を結びましょう。
- 案件・仕事を募集していない人は原則除く
- 連絡窓口がなく、連絡を取るのが困難な人
- テキストでの連絡・コミュニケーションが取れない人
特に未成年などは、保護者の許可を得ずに就業させたとわかれば、雇った側が法的に罰せられる可能性もあります。相手が年齢を偽ることも想定して、安心して個人情報を預けられるような体制ができるとよいですね。
また連絡手段はSNSのDMだけではなく、メールアドレスなど複数の連絡手段を持っておきましょう。連絡をしても返信がなく、情報を確認したのかわからず催促をする手段もない状況は避けなくてはいけません。
趣味の活動 、副業禁止の会社で働いている方は無理に起用しない
完全に趣味の活動としており、仕事・案件を求めていない方には無理に案件を受けてもらうことは難しいでしょう。
すべてのVTuberが案件をやりたいわけではありませんし、案件に興味があっても本業の都合で収益が発生すると受けられないという方もいるでしょう。
どうしても起用したい・コラボしてほしい相手がいる場合は、まず相手と相談する機会を設けるところから始めましょう。
報酬体系や支払い、業務時間、拘束期間などを明確にする
案件を依頼するからには、報酬や業務時間などの条件を企業・事業者のみなさんは明らかにして伝えましょう。
何をやってほしいのか、訴求してほしいポイントややってはいけないことは何かを明確に伝えないと、起用したVTuberに配信で十分なパフォーマンスをしてもらえない可能性が高くなります。
仕事や案件を依頼されるVTubeのすべてが、仕事に慣れているわけではありません。 またどのような案件にも「守秘義務」があり、公開できる期限が来る
まで情報を出さない・告知をしないなど守ってほしいことをレギュレーションと合わせて伝えましょう。
VTuberへの依頼範囲・やってほしいことを明確にする
企画の準備から開始〜終了まで、VTuberにやってほしい業務は明確にしておきましょう。
宣伝・PRなどの拡散に協力してほしい場合も、集中してSNSでの拡散に協力してほしいタイミング・スケジュールを事前に伝えることで効果的な拡散を狙えます。
PR案件と明記した上でSNSで独自に発信を行ってほしいなどの、具体的な指示をしなければ、起用したVTuberも何をしたらいいのかわからず、困ってしまいます。
VTuberに依頼したい業務の明確化が不十分だと、どのような企画進行でも問題にが起きやすくなります。事前に周知を決めておけばトラブルは避けられますので、気をつけておきましょう。
必ず検索されても困らないようにHPを整備しておく
個人VTuber、事務所問わず、一緒に仕事をしたいと持ちかけられた場合、誰でも相手のことを調べるでしょう。
会社名などでネット検索、SNS検索されたときに会社のHPや情報が出てくるようにしておきましょう。
また会社のHPは必ず見られるものですから、会社概要や実績の証明など信頼してもらえる情報を掲載しておくことも忘れてはいけません。 SNSでは普段の活動の発信を定期的に行い、現在も稼働している状況やリアルタイムな取り組みを伝えることで、実態のある企業だと伝わりやすくなります。
不安を払拭してもらうためにも、自社のHPには情報をしっかりと掲載して、信頼できる企業と思える見た目とコンテンツを整えましょう。
- 会社概要、運営者の情報
- プライバシーポリシー
- サービスの提供実績や事例(&お客さまの声)
- 会社の理念、ビジョン など…
VTuberをだます、悪質な案件のせいで警戒心は高い
近年では、特に個人VTuberの方を対象に、案件を紹介すると見せかけた悪質なコンタクトを取ってきた事例や、案件を受けたものの報酬が支払われない事例、案件紹介や問い合わせが来たが信頼できる会社かどうかわからなくて不安になったという声が増えています。
仕事がたくさんほしい、新しいことに挑戦してみたいと思っているVTuberのみなさんの気持ちを利用する一部の悪意ある方が存在するせいで、警戒心が強くなっているVTuberは非常に多いです。
VTuberの採用後に起こりやすい雇用トラブルの防止方法
最後にVTuberを採用後、企画がスタートしてから起こりやすいトラブルの防止法をお伝えします。
どのような企画・案件も予想していなかったトラブルは起きてしまうもの。ですが、事前に気をつけておけば防げることもあります。
円滑に企画とコミュニケーションを進めるために、ぜひチェックしておいてくださいね。
キャスティングしたVTuberが炎上・トラブルを起こしてしまった
企業や事業者がどうしても避けたい「炎上トラブル」の発生。
どんなに運営側とVTuberが注意をして対策をしていても、炎上・トラブルにつながるリスクを0にすることは難しいです。
まずは慌てずに、原因と現状把握を行いましょう。
責任の追及よりも、原因の解明と外部・内部への初期対応を優先して冷静に行いましょう。
取引先や関係者が複数いる場合には、企画の責任者が原因の説明、場合によっては謝罪が必要になるかもしれません。また表に立って活動するVTuberにいわれのない誹謗中傷が起きていた場合は、VTuberのメンタルケアや状況に対してのヒアリングも重要です。
VTuberを起用したからには、彼ら・彼女らを放置して自分たちでなんとかさせてはいけません。
問題の起点がどこにあり、関係のないところで騒がれているだけなのか、何が問題となっているかで初期対応や発信すべき情報が変わるため、落ち着いて現状の把握とイメージ回復に努めましょう。
企画や案件が振るわなかった場合は冷静にデータ・設計の分析をする
企画や案件が失敗とまではいかなくとも、予想していた結果・目標に届かなかったということもあり得ないことではありません。
しかし企画設計や活動の規模に対して十分な成果がでていても、想定している目標設計(KPI)が高すぎたり、適切な設計でなかった場合には冷静にデータや数字を見て分析することが必要です。
企画や運営が悪かったと分析なしに決めつけてはいけませんし、企画に参画したVTuberに責を転嫁してもいけません。1つの企画の成功を目指す上で、運営とVTuberはパートナーの関係にあります。
YouTubeの再生時間や視聴率はもちろんのこと、SNSのインプレッション数や商品の販売数など、関係するさまざまなデータを収集できるように事前に計画を立てておきましょう。
企画や準備が遅れ、起用VTuberが就業できなくなった
企画や案件の規模によって、予定していた配信日・スケジュールがずれる、拘束期間が前後するなどの問題はどのような案件でも起こることです。
予定が大きく変わったことで、VTuberの予定が合わないことやアサインが難しくなることも想定しておかなくてはいけません。
契約書では、そうしたトラブルの対処方法も記載しておく必要があります。
双方で話し合い、お互いに歩み寄る姿勢で円満な解決を目指すことが望ましいです。話し合いや相談、調整を行うためにも起用するVTuberとはコミュニケーションを取り、信頼関係の構築を目指しましょう。
VTuber業界に詳しい専門家をアサインでトラブル防止につながる
現在のVTuber業界では、VTuberのサポートや運営フォローができる人や、プロジェクトマネージャーの人材が不足しています。VTuber事務所でも経験を積んだVTuberに運営に加わってもらう事例もあるほどです。
VTuberが輝ける企画や案件が増えている一方で、仕事として結果を出すための全体統括や適切な目標設計ができる人材は大変貴重です。マーケティング知識はもちろんのこと、VTuber業界の文化やVTuberに対しても深い理解を持っていなければ、難しいポジションです。
そのため、初めてのVTuberを起用する企画の実践が不安な場合は、VTuber業界に精通した専門家がいる専門企業と一緒にやってみると、今までお伝えしてきたさまざまなリスクを事前に回避できるよう設計し、トラブル対応にも冷静に対処できます。
キャスティングしたVTuberとともに、企画を成功させるには信頼関係が大切
今回はVTuberをキャスティング・雇用する際に、事業者のみなさまに注意してほしいポイントをお伝えしました。
VTuberを活用した企画の成功例では、SNSで多数のユーザー投稿を得られたり、集中的な商品販促につながるなど、多くの人に影響や宣伝効果を生み出します。その反面、契約面での不備や不適切な発言・対応が露呈してしまうと、予想していない形で広がってしまうリスクもあります。
そうならないためにも、事業者のみなさまと起用されるVTuberの両方が、共に満足して成果を生み出せるVTuberマーケティングの企画を、uyetは自社サービス展開を3年以上続けている経験を生かして、成功の輪を広げています。
ぜひVTuberのキャスティングや活用案件についてのご不安や、アイデアを形にしたいとお考えのみなさまはぜひお気軽にご相談ください。