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VTuberが“日常”に溶け込むには──進化するための行動設計と未来予測

「VTuberはもう飽和なのか?」「スパチャやライブ以外の伸びしろはあるのか?」

そんな問いが業界関係者やファンの間でささやかれるようになってきました。

確かに2020年代前半に急成長したVTuber業界は、ライブ配信を軸としたスーパーチャット、グッズ販売、リアルイベント、さらには企業・自治体とのタイアップなど、多様な収益モデルと活動領域を築き上げてきました。

カバー株式会社やANYCOLOR株式会社といった最大手事務所を運営する2社は、IP展開や海外進出、3Dライブ技術の発展によって今も着実に業績を伸ばしており、市場としては成熟を迎え始めていると言えます。

そんな中で浮かび上がる問いは、「この成長は他のVTuberや事務所、あるいは企業・自治体が再現できるものなのか?」になってくるでしょう。

そこで今回は今後VTuber事業はどういった変化を遂げていくのか、またプロモーションやPRでのVTuberの役割と成功ポイントを解説します。

目次

成功の鍵は、“イノベーションの連鎖性”にある

事実、「後を追っても同じようには伸びない」という声は多く、

・人気タレントがいるから伸びた
・配信に特化した体制があったから成功した

といった“個別の条件付き成功”が多くを占めています。

そんな中でVTuber業界全体としては、スケーラブルな成長モデルにはまだ到達していないとも言えます。

この“成長の再現性”という視点は、VTuber業界にとって次のステージへ進むための重要な分岐点です。

早稲田大学名誉教授・内田和成氏は、著書『イノベーションの競争戦略』の中でこう述べています。

画像引用:https://str.toyokeizai.net/books/9784492534496/

「イノベーションとは単に新しいことをすることではない。それによって“人の行動を変え”、さらに別の変化を次々と引き起こすことが本質だ」

VTuber業界でも、スパチャ文化、リアルイベント、企業タイアップなど、革新的な仕掛けは数多く生まれてきましたが、そうしたイノベーションが単発で終わってしまうのか、それとも“次の仕組み”に進化していくのか

この「連続性の有無」こそが、業界の未来を左右する分岐点になります。

本記事では「VTuber業界の次の成長はどこにあるのか?」という問いに対して、“成果”ではなく“仕組み”としての再現性を重視する視点からアプローチしていきます。

また「VTuber業界の次の成長はどこにあるのか?」の答えを探るために、業界の中に静かに進行している「進化の兆し」を読み解きながら、業界のスケーラビリティと持続可能性を確保するための構造的条件を明らかにします。

ファンとの関係性が“応援”から“関与”へと進化する

VTuber業界において最も本質的な構造変化の一つは、ファンの関わり方が“応援”から“関与”へ、さらに“機能を担う存在”へと進化していることです。

かつて、ファンの役割は「見る」「スパチャを投げる」「感想を投稿する」といった受動的なものでした。

ただ現在では、「一緒にプロジェクトをつくる」「企画の裏方を支える」「制作チームの一部として貢献する」など、能動的かつ役割的な参加行動が一般化しつつあります。

時系列ファンの役割
「見る」「スパチャを投げる」「感想を投稿する」
「一緒にプロジェクトをつくる」「企画の裏方を支える」
「制作チームの一部として貢献する」

この背景には、Z世代を中心とした“所属欲求の高まり”があります。

「ただ好きなだけでは物足りない」「自分の貢献が成果に反映されてほしい」と感じるユーザーが増え、推し活は“消費行動”から“共創行動”へとシフト。

また、二次創作文化の成熟、動画編集・デザインツールの進化、生成AIの普及といった技術的要因によって、ファンが“つくる側”に回るハードルが著しく低下したこともこの進化を後押ししています。

そんな中で、下記のような行動変化が業界の一部で増加する可能性があります。

・SNS上で自主的な広報プロジェクトを立ち上げる
・ファン主導の切り抜きアカウントが運営され、流入元の半数を占める

これらはもはやファンではなく“共創者”“実働パートナー”と呼ぶべき存在であり、VTuberプロジェクトにおける重要なリソースになっている。

画像引用:https://carta-marketing-firm.co.jp/blog/075/

企業・運営側から見ても、これは単なる“ありがたい動き”ではない。実際に、ファン関与の設計によって──

・LTVが向上し、単発の熱量に依存しない収益構造が築かれる
・UGCによる認知拡大が起き、広告投資を抑制できる
・“ファンが選ぶ切り口”が新たな市場創出を誘発し、プロジェクトの生命線が延びる

LTV:「Life Time Value」の略。日本語では「顧客生涯価値」と訳されます。顧客がサービスや商品を利用開始してから終了するまでの期間で、企業にもたらす利益の総額を表す指標です。

UGC:User Generated Content(ユーザー生成コンテンツ)の略で、企業ではなく一般ユーザーが作成したコンテンツのこと。

ユーザーによる”関与”の種類とは

ここで問われるのは、こうした関与をいかに“設計”できるかという視点です。

・関与のレベルを段階別に設計する(観戦/投稿/貢献/リード)
・参加者のモチベーションを可視化し、貢献を称える仕組みを設ける
・タレントや事務所の“手が届かない領域”をファンが補う余白を残す

これらが仕組みとして整えば、VTuberは単なる“コンテンツ”ではなく、“共創型プロジェクト”としての成立性を持つようになります。

こうした関与を仕組みとして体系化するうえでは、「ファンの関与レベル」を段階的に整理することが有効的です。

例えば、以下のようなステップで関与の幅を可視化することができます。

レベル1視聴(受動的な応援)
レベル2コメント・SNSシェア・UGC投稿(能動的な応援)
レベル3制作支援・イベント運営・CF企画(能動的な貢献)
レベル4プロジェクト立案(リード型ファン)

この構造に沿って“参加の余白”を用意し、どのレベルのファンにも自分にできることがあるように設計できれば、熱量を持続させながらLTVを高めることができます。

実際に一部の事務所では、Discordコミュニティ内で“制作班”や“伝道班”などの役割を設け、ユーザーが自律的に行動できる“デジタル応援団”のようなエコシステムが整備されています。

言い換えれば、これからのVTuber産業においては「どれだけ熱量を持たせられるか」ではなく、「どれだけ“役割の余白”を設計できるか」が鍵となります。

画像引用:https://entamerush.jp/554888/

VTuberは“社会を動かす装置”になるか─エンタメからインフラへ進化する人格メディア

VTuberはもはや“配信者”の枠には収まりません。

ここ数年で、VTuberはライブ配信やYouTube動画を起点としたエンタメを越え、教育・行政・医療・企業広報など、社会の基盤に近い領域での活用が広がっています。

多くの場面で活用されるVTuberですが、“人のように振る舞う存在”が社会の中で情報を翻訳し、関心を喚起し、行動を引き出す装置として機能し始めていることが考えられます。

画像引用:https://www.foriio.com/works/1470159

「伝える」では届かない─社会の情報伝達におけるVTuberの新しい立ち位置

現代社会が抱える情報課題のひとつは、「正しい情報があるのに、伝わらない」という構造。

・行政手続きや制度説明は複雑で、テキストでは理解されにくい
・教育現場では、生徒の関心を惹きつける“語り手”が不足している

こうした場面で、VTuberは“ちょうどよいメディア”として機能しています。

ここで明らかになってきたのは、VTuberが単なる“代わりに話す存在”ではなく“わかりやすく伝わるインターフェース”として社会機能に組み込まれ始めているという事実です。

導入ステップの可視化─社会実装は“3段階の進化”で進む

社会実装の成否は、導入の仕方に左右されます。

導入の難易度と定着率を踏まえると、VTuber活用は3段階に大きく整理できます。

①スポット活用(例:イベント・キャンペーン/期間限定)
費用対効果を測りやすく、関心喚起型の導入がしやすい
②機能的導入(例:問い合わせ対応・制度解説・教材)
継続運用型。構造設計・運用負荷が課題となる
③常設人格化(例:案内役/広報顔/社内コミュニケーター)
企業や自治体にとっての“顔”になる。設計思想とガバナンスが必須

この3段階の設計において重要なのは、「どの行動を引き出したいか?」を明確にした上で、人格・トーン・接点設計を組み立てることです。

こうした社会実装が進む中導入担当者からよく挙がると思われる懸念のひとつが、「VTuberは、広報にとって効果的でもリスクやコストが大きいのではないか?」という点だ。

たしかに、キャラクターの導入には初期コスト(設計・制作・体制構築)や運用体制にかかる労力など、一般的な広報施策に比べて企画段階での検討事項が多いという実態があります。

しかし、導入後のリテンションの高さ(ユーザー接点の持続)や動画アーカイブ資産の積み上げ、ナレッジの再利用性を考えると、“広報コストのストック型投資”としては極めて効率が良いです。

行動変容を促すUIとしてのVTuber

多くのBtoB導入担当者が見落としがちなのが、VTuberは“コンテンツ”ではなく“UI”であるという視点です。

・行政:「制度に触れたことがない人」にとってのファーストタッチ
・教育:「受動的な学び」から「自発的な調べ学習」へのスイッチ
・企業:「問い合わせ・エントリー・社内施策の行動率」を上げる導線

つまり、VTuberは「伝える」ために存在するのではなく、“動かす”ための設計ツールとして活用されるべきです。

このような設計視点を持てるかどうかが、VTuberの社会実装が“単発の試み”で終わるのか、“中核的な広報資産”として定着するのかの分かれ目になります。

画像引用:https://www.parque-net.com/special/sango35339/

VTuberは“起用される存在”へ─差別化と専門性で勝つ時代のポジション設計

VTuber業界における参入ハードルは、近年ますます下がってきています。

 Live2D、音声合成、配信支援ツール、生成AI。これらの技術進歩によって「VTuberになる/VTuberを持つ」という行為自体は特別なものではなくなりつつあります。

今や個人はもちろん、企業や自治体でも“自分たちのVTuber”を簡単に持てる時代になりましたが、ここで新たな課題が生まれています。

それは、「誰でもVTuberを持てるようになった時代に、どう差別化するのか?」という問いです。

数が増えるほど“汎用キャラ”は埋もれる

VTuberが量産され、存在自体が珍しくなくなるにつれ、「可愛い」「かっこいい」「なんとなく面白い」といった表層的な魅力だけでは見つけてもらえない市場になっている。

・SNS上で埋もれる
・検索されない
・視聴されても記憶に残らない

こうした現象が頻発する中で求められているのは、明確なポジショニングです。

言い換えれば、「この分野ならこのVTuber」「この説明をするなら、この人」と思い出してもらえるような、「専門性×差別性」の構造設計が必要不可欠です。

画像引用:https://x.com/tabino_sora__
画像引用:https://x.com/tabino_sora__/status/1932736980439478582/photo/1

差別化の起点は「課題×対象ユーザー」の一点突破

ここで重要なのは「どんなキャラにするか?」という感覚的な問いではなく、“誰のどんな課題を解決するのか?”という設計思想の明確化です。


対象領域

専門性ポジション

差別化ポイント

医療・福祉

高齢者支援型VTuber

やさしい口調/制度翻訳/多言語対応

教育

中高生の金融リテラシー啓発

ストリーミング親和性/具体例中心/テンポの良さ

自治体観光

“地域の顔”VTuber

方言/ローカル情報/地元企業との連携感

これはもはや“エンタメIP”の話ではない。「誰の文脈で、どんな行動を起こさせるのか」という“行動促進メディア”の設計論です。

VTuberを「差別化された存在」として成立させるには、単に“専門領域”を設定するだけでなく「人格の設計プロセス」を意識的に行う必要があります。

ここでは、VTuberを社会で機能させるための設計プロセスを5つのステップに分解してみます。

ステップ1|対象ユーザーの明確化
誰に届けたいのか。属性(年齢・地域・関心)、心理(不安/期待/抵抗感)などを言語化。
ステップ2|行動目標の設定
視聴後にどんな行動をとってほしいか。例:申請、参加、相談、検索など。
ステップ3|人格設計
トーン(例.友人?先生?)、テンポ、語彙、服装、名前。ユーザーにどう受け取られたいか。
ステップ4|接点設計
どこで・いつ・どのように接するか(SNS?施設内モニター?)を設計。
ステップ5|PDCA可能な体制づくり
台本テンプレート、FAQ整備など運用体制を整える。

このような構造化された設計を行うことで、VTuberは「一発屋のマスコット」ではなく「組織の一部として継続するキャラクター」になっていきます。

導入側にとっても「差別化」は合理的な選択

企業や自治体にとって、VTuberを活用することはリスクでもあります。

・炎上リスク(不適切発言・キャラ性の誤解)
・継続運用の負荷(中の人の都合、更新頻度)
・コンセプトの陳腐化(他所と似すぎる)

このリスクを軽減するには、初期段階から差別化と専門性を前提に設計することがコスト効率も信頼性も高いです。

キャラクター傾向
汎用キャラ消耗型広報/短命
設計キャラ指名型メディア/長期資産

VTuberは「情報を届ける装置」から「影響を設計するメディア」へ

差別化は目立つことではありません。

「特定の文脈で、確実に機能する存在」になることこそが、次のVTuberのあり方です。

・情報を届けることはAIでもできる
・感情を乗せて語ることは動画でも可能
・「この人が言ってくれたからわかった」という納得は、親しみやすいキャラクターであるVTuberだからこそ起こせる

VTuberは今や“動画配信のためのキャラクター”ではありません。

課題と対象に応じて設計される“メディア”として社会に組み込まれていく存在であります。

成長の再現性を握るのは、“コンセプト”を設計できるプレイヤー

ここまで見てきた通り、VTuber業界の進化は「一発の成功をどう生み出すか」ではなく、「自身の得意フィールドをどう設計するか」に移行しています。

本記事で挙げた各章のトピック「ファンとの関係性、社会的機能、差別化と専門性」はいずれも単独のトレンドではありません。

 すべてに共通するのは、“行動変容を引き起こし、連鎖的な変化を持続させる構造”をどう組めるかという問いです。

VTuber業界は、決して停滞しているわけではありません。最大手2社は今も成長を続けており、IP展開、海外戦略、リアルイベントなど多面的な拡張を実現しています。

しかしその成功は「仕掛ければ誰でも同じように再現できるモデル」とは言いがたく、VTuberをただ起用しても同じようには伸びなません。

では、その違いを生むものは何か?

それは「どんなコンセプトにして、どんな設計を行ったか」に尽きます。

本記事で提示してきた問いの例とは

  • ファンにどんな役割を持たせると、どんな行動が引き起こされるか?
  • VTuberが“人を動かす存在”になるには、何を削り、何を足すべきか?
  • 誰でもVTuberを持てる時代に、どのような設計で差別化すべきか?
  • VTuberを介して、社会とのどんな新しい接点を生み出せるか?
  • どうすれば、“偶然”ではなく“意図的に”発見され続ける存在になれるか?

こうした問いは、マーケティング施策やPRアイデアの一歩手前です。

むしろ「何を目的に、どこに向かって、このVTuberを設計するのか」という上流の思考の質がすべての成果を左右します。

まとめ:成長の再現性を握るのは“問い”を設計できるプレイヤー

再度紹介したいのが、早稲田大学名誉教授・内田和成氏のこの言葉。

「イノベーションとは単に新しいことをすることではない。それによって“人の行動を変え”、さらに別の変化を次々と引き起こす仕組みを生み出すことだ。」

そして最後に補足しておきたいのは、今後のVTuber市場において「コンセプトを設計できる人材」がどれほど重要かという点です。

単に演者を見つけ、デザインを発注し、SNSで広報する──それだけでは“すでにいるVTuber”を超えることはできません。

今後必要とされるのは、

・目的から逆算して構造を設計する力
・情報設計・行動設計・ユーザー設計を並行して組む力
・チームで検証と改善を回せる“戦略思考型のプロデューサー”

こうした人材がエンタメ業界だけでなく、広告・政策・教育・HR領域にまたがってVTuberを設計し始めた時、この業界は真の“社会インフラ”へと変化していく。

一時的な話題性や熱量ではなく、“人の行動が変わり、次の行動が生まれ続ける設計”を構築できるかどうか。それが、真の意味での再現可能な成長戦略となるでしょう。

監修者 KANAI(金井洸樹)

VTuber初心者ガイドINDEX

あなたの活動が1秒でも長く続くためのVTuberのデビューからファン獲得、そして自分でビジネス始めるまでの総まとめ!

第1章 VTuber業界を知ろう!
第2章 自分のキャラクターを作ろう
第3章 配信環境を準備しよう
第4章 初配信は超大事!最高のデビュー準備!
第5章 ファンを掴む企画を考えよう!
第6章 収益化やステップアップしたい
第7章 事務所に所属する!オーディション対策
第8章 手軽に始められるVライバーの世界!
第9章 始めるなら今!TikTokLIVEデビューしよう!
第10章 あなたがもしVTuberビジネスをするなら

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