多くのVTuberやVライバーが活動を続ける中で、「生活」と「活動」のバランスに悩む方は少なくありません。特に兼業で活動を始める人にとって、税務・会計・住環境・健康といったテーマは避けて通れない課題です。
uyet mediaでは、VTuber・Vライバーのリアルなライフスタイルに寄り添う企画として、専門家インタビューを実施しています。
今回はその第一弾として、税理士でありVTuberでもある「うしくん」さんをゲストに迎え、「兼業VTuberが税務面で押さえておくべきこと」について伺いました。
本日のゲスト紹介
ゲスト:税理士VTuber 「うしくん」

公認会計士&税理士VTuber。note「ギャル生徒会と学ぶ会計シリーズ!」累計8.1万。メタバースコミュニティ「CLUSTARS」累計10万。 米VRChat社公式パートナー。株式会社インベーダーズ CFO。
うしくんXアカウント:https://x.com/Ushikun_desu
うしくんYouTubeアカウント:https://www.youtube.com/@metaworks
うしくんnoteアカウント:https://note.com/ushikun_desu
インタビュアー:株式会社uyet 代表プロデューサー「KANAI」

2018年よりANYCOLOR株式会社にてVTuber事業立ち上げに従事し、キャラクターを用いたコンテンツの企画/運用、企業案件配信の企画などを担当。 現在は株式会社uyetにてVTuberを用いた新規事業開発、プロモーション事業、マーケティング事業、VTuber支援事業を展開。またJA全農様と朝日新聞社様と連携してライブコマースイベントを開催。
金井の公式Xアカウント:https://twitter.com/MoveSkk
株式会社uyet公式アカウント:https://uyet.jp/
株式会社uyet公式X:https://x.com/uyet_inc
税理士VTuber!うしくんさんのご紹介
金井うしくんさん、本日はよろしくお願いします。うしくんさんをご存知ない方のために、まずはご自身について教えてください。



よろしくお願いします。私は、公認会計士・税理士としての実務経験をもとに、「税理士VTuber」として活動しています。
会計や税務はどうしても難しく、堅苦しい印象を持たれがちです。ですが私は、それを“学問”ではなく“エンタメのひとつ”として伝えたいと思っています。
専門知識をかみ砕き、身近な比喩や笑いを交えて話すことで、数字や税金に苦手意識を持つ人でも「なるほど」と自然に理解できるようになることを目指しています。
さらに、VR・メタバース・クリエイターエコノミーといった新しい領域にも挑戦しています。そこに税務や会計の知識を組み合わせることで、「お金の知識がこんなに面白くて役に立つんだ」と感じてもらえる瞬間を増やしたいからです。
私の活動の軸は「誰も置いていかないこと」。お金のリテラシーを学ぶことは、人生を自由に選ぶ力につながります。



「誰も置いていかない」という姿勢、うしくんさんのXやnoteからも伝わってきます。
では、さっそく本題へ。兼業VTuberが活動を始める前に知っておくべき税務のポイントを教えてください。
VTuberを始める前に知っておくべき4つのポイント
節税メリットが受けられない!開業届の提出



まず、開業届について。副業から始める人も多いですが、そもそも提出するべきですか?



個人VTuberが配信やイベントなどで収益を得ていく場合、その収入は基本的に「事業所得」として扱われます。そのため、原則として所轄の税務署に開業届を提出する必要があります。
副業として活動を始める場合でも、将来本格的に取り組む予定があるなら、早めに手続きを済ませておくのがおすすめです。
開業届を出していないと、次のようなデメリットがあります。
①青色申告が使えず、節税メリットを受けられない。
②税務署から「無申告では?」と疑われる可能性がある。
「まだ副業だから」と放置していると、思わぬ損失やリスクにつながりかねません。安心して活動を続けるためにも、早い段階で開業届を出しておくことが、節税と信頼の第一歩です!



気づかずに一年以上経過してしまっている人もいますもんね。時期を逃さないためにも、早めに出しておきたいです。
積み重ねが最も重要!毎月の経理業務



次に、毎月やるべき業務について。具体的にはどんなことをすればいいですか?



VTuberとして活動していくなら、毎月の経理作業を習慣にすることが欠かせません。具体的には、収入や経費の記帳、請求書の発行と送付、支払管理、領収書の整理といった基本的な流れです。
これを地道に続けていれば、確定申告のときにスムーズに処理でき、余計なストレスを抱えずに済みます。
一方で、この習慣を怠ると領収書が見つからず経費にできなくなったり、場合によっては追徴課税を受けるリスクもあります。
さらに、確定申告直前に慌てて作業することになれば、時間も気力も奪われてしまいます。日頃から少しずつ経理を整えることが、安心して活動を続けるための大切なポイントです。



この業務が一番日常的に発生するので、事業を始めた実感が湧くかもしれませんね。
把握できてる?経費として計上できるもの



VTuberが経費にできるものって、どんなものがありますか?



VTuber活動に必要な支出は、想像以上に幅広く経費として計上できます。
代表的なものは、配信用のPCやマイク、キャプチャーボードといった機材費、高速インターネット回線やモバイル通信費などの通信費、さらにLive2Dモデルの制作費やサムネイル・BGM制作費といった外注費です。
これらは事業に関連すると認められる範囲であれば、すべて経費にできるため節税につながります。
一方で、経費の計上を誤るとデメリットもあります。プライベートな支出を無理に経費に含めれば、税務署から否認されて追徴課税やペナルティを受ける可能性があります。
また、領収書や用途の記録が曖昧だと本来なら経費にできるものですら認められず、結果的に税負担が増えるリスクもあります。
「経費になるかどうか」を正しく判断し記録を丁寧に残すことが、安心して活動を続けるための大切なポイントです。



個人VTuberは「経費になるものでも計上してない」というパターンも多いようですね。
20万円がひとつの目安!確定申告の基本



確定申告についても教えてください。20万円のラインが重要ですよね?



VTuber活動で得た年間の所得(収入から経費を差し引いた額)が20万円を超える場合は、必ず確定申告が必要です。これは会社員として給与を受け取っている人でも同じで、副業としての所得が20万円を超えれば申告義務が生じます。
逆に20万円以下であれば申告は不要ですが、その判断には日頃から収入と経費を正しく集計しておくことが欠かせません!
もし申告を怠れば、無申告加算税や延滞税といったペナルティを受けるリスクがあります。さらに意図的でなくても「隠していたのでは?」と税務署に疑われ、数年分さかのぼって調査される可能性もあります。
また、経費の記録が不十分で集計が曖昧だと本来受けられるはずの節税メリットを逃してしまい、結果的に税負担が増えてしまうこともあります。
20万円のラインを超えるかどうかにかかわらず、日頃から丁寧に経理を整えておくことが重要です。



開業届と同じで、先延ばしにすればするほどデメリットが増えるんですね。
VTuberの税務しくじり話
とあるVTuberのしくじり話①:経費処理の誤りで否認、追徴課税に



とある個人VTuberは、活動に必要なPCやマイク、外注費を経費にしていましたが、その中に私用のスマホ代やプライベートの外食費まで含まれていました。
税務署の調査でそれが問題視され、私的利用分は経費として認められず、修正申告と追徴課税を受けることとなりました。
VTuber活動は自宅作業が多いため、事業と生活の線引きが難しいのが特徴です。しかし「家事按分」を無視して全額を経費にすると、税務署から「不適切な経費計上」と判断されます。
このケースでは、明らかにプライベートな支出を経費として処理したことが問題でした。
事業用と私用は明確に区分することが必須です。インターネット回線やスマホなど兼用費用は利用割合に応じて按分し、根拠を残しておくことが安全策となります。



これはVTuberさんに限らず、個人事業主のあるあるですね。「これも仕事の一環かな?」って思ってつい入れちゃう気持ちわかります。でも、按分とか根拠づけをしておくだけで全然見え方が違うんですよね。
とあるVTuberのしくじり話②:女性ライバー、1.2億円を無申告し2100万円の追徴課税



また別の女性Vライバーは配信アプリで投げ銭やギフトを受け取り、4年間で約1.2億円もの収入を得ていました。
しかし一度も確定申告をしておらず、税務署の抜き打ち調査で全て発覚。最終的に無申告加算税などを含めて約2100万円の追徴課税を受けることになりました。
本人は「忙しくて忘れていた」と弁明しましたが、当然認められませんでした。近年は個人でも配信で巨額の収益を得られるようになり、税務署はネット収入を重点的に監視しています。
このケースでは、大きな収入を得ていながら「申告をしない」という基本的な義務を怠ったことが直接の原因でした。
収入が大きくなればなるほど税務署の監視対象になり、無申告は必ず発覚します。定期的な記帳と期限内の申告を徹底することが、活動を守る唯一の方法です。



これは芸能人のニュースでも話題になりましたね…。「忙しくてできなかった」「怠惰だった」は通用しないって、改めて身にしみます。夢中で活動してるとつい後回しにしがちですけど、申告は信頼を守る仕事の一部ですね。
AIを活用した不正検出と通報のリスク



最近の税務署の動向についても教えてください。



2025年から税務署はAIを活用し、申告データの不正を高精度で検出しています。数百万円規模の申告漏れでも調査対象になることが増えました。
特にVTuberやYouTuberのSNS投稿は監視されています。
高級品や遊びの投稿が経費計上と矛盾すると否認されるリスクもあります。また、飲み会での脱税自慢や取引先からの通報も発覚のきっかけになります。
知人や視聴者が「ムカつくから」と通報するケースも多いです。



通報ってそんなにあるんですか?



はい、意外とあります。飲み会で「全部経費にする」と自慢したり、SNSで派手な投稿をすると通報されるリスクが上がります。
税務署はネット上の情報も収集しているので慎重な管理が必要です。



怖いですね…。もしミスがあった場合、罰金はどうなるんですか?



税務署に指摘されると、税金の15~20%(50万円超は20%)が追徴課税として加算されます。
たとえば1億円の税金なら、最大2000万円の追加負担に。しかし、自主的に修正申告すれば罰金は5%に軽減され、1億円なら500万円で済みます。
修正申告は過去3年分を対象に、利子を支払う形で提出します。早めに税理士に相談し、申告を見直すのが賢明です。



修正申告の方法は簡単ですか?



はい、修正申告は国税庁のウェブサイトや税務署で手続きできます。ミスに気づいたら、早めに相談して申告を修正しましょう。税務署も穏やかに進めてくれる場合が多いです。
節税のコツ!知っておくと得する8つのポイント



怖い話の後は、役立つ情報をお願いします! 節税のコツはありますか?



今回は適切な申告を行うための8つのコツをお伝えします。
青色申告特別控除
青色申告を選択すると「青色申告特別控除」が受けられます。これは正しく帳簿をつけて申告することを条件に、最大65万円を所得から差し引ける制度です。
例えば、年間所得が300万円あった場合、この控除を受ければ課税対象は235万円まで下がり、税額を大幅に減らすことができます。
控除額は「電子申告(e-Tax)や電子帳簿保存を行った場合は65万円」「簡易な帳簿のみの場合は最大10万円」といった違いがあるため、環境を整えておくことが節税につながります。
承認申請は確定申告をする年の3月15日まで、または開業から2か月以内に税務署へ提出する必要があるので、活動を始めたら早めに準備しておくことが肝心です。
兼用費用の按分
自宅で活動するVTuberにとって、ネット回線やスマホ、PCといった支出は「事業にも私用にも使う」ことがほとんどです。こうした兼用費用は、事業での使用割合を算出して按分してその分だけを経費に計上できます。
例えば、年間12万円の光回線を仕事で半分利用しているなら6万円を経費とするイメージです。
按分の割合は自己判断でも構いませんが、根拠を説明できる形で記録しておくことが大切です。
日頃から「作業時間の比率」「データ通信量」など、自分なりの基準を決めておけば、申告時に税務署から疑問を持たれたときにもスムーズに対応できます。逆に基準が曖昧だと、経費が否認されるリスクが高まります。
初年度は白色申告もあり
開業したばかりで帳簿の知識や準備が整っていない場合、無理に青色申告を選ばずに初年度は白色申告を選ぶのも選択肢です。
白色申告は、帳簿付けや申請のハードルが比較的低く、シンプルな形式で確定申告を行えます!
もちろん青色申告の節税メリットは受けられませんが、まずは「収入と経費を記録し、確定申告を経験する」ことを優先できます。そして翌年以降、会計ソフトの導入や帳簿整理の習慣が整ってきた段階で青色申告へ切り替えるのがスムーズです。
焦って最初から完璧を目指すよりも、段階を踏んで仕組みを整えることが、長く活動を続けるコツになります。
仕事に関連すれば「勉強代」も経費に
例えば動画編集ソフトの講座、配信機材のセミナー、ビジネス書籍など、事業に関連があれば自己研鑽費用も経費にできます。
「これは趣味?」と思うような支出も、活動との関連性を説明できれば経費として認められるケースがあるので、領収書は捨てずにとっておきましょう。
コラボや打ち合わせのカフェ代
ファンとの交流は難しいですが、同業者や外注スタッフとの打ち合わせで利用したカフェや飲食代は「会議費」として経費にできます。
プライベートな食事まで入れるのはNG。領収書の裏に「◯月◯日 動画サムネ制作打ち合わせ」とメモしておけば安心です。
「開業費」を活用して初期投資を分散
デビュー準備でかかった支出(機材購入、デザイン費、サイト制作費など)は「開業費」として繰延資産にできます。
一度に経費にしても良いですが、数年にわたって分割償却することも可能。利益が出そうな年に合わせて経費化できるので非常におすすめです。
赤字でも確定申告するメリット
「今年は赤字だから申告しなくていいや」と考えるのは損です。青色申告なら赤字を3年間繰り越せるため、来年以降黒字になったときに相殺できます。
特に初期投資が大きいVTuber活動では、赤字申告をしておくことが将来の節税につながります。
打ち合わせやイベント用の差し入れも経費に
配信仲間との企画会議や外注スタッフとの打ち合わせに使った飲み物・菓子類は「会議費」として計上可能。イベントで配るノベルティや差し入れも「広告宣伝費」として扱えます。
領収書の裏に「◯月◯日 打ち合わせ用」などメモしておくと安心です!



8つもありがとうございます!赤字でも確定申告をした方が良いのは知らない人も多そうですね。
安心して配信活動を行うために、正しい税務知識を身につけよう!



最後に、読者へのメッセージをお願いします。



VTuberとして副業を始める際は、“バーチャルな活動”も立派な事業として扱われることを理解し、税務や経理の基本を押さえておくことが大切です。
開業届の提出や収支の記録、毎月の経理、領収書の整理といった日常的な管理を怠らず、必要に応じて税理士に相談して正確に申告しましょう。
事前に知識を身につけて準備しておけば、税金で痛い目を見るリスクを減らせるだけでなく、安心してVTuber活動を続けることができます。
正しい知識と管理を味方につけて、あなたのVTuberライフをより楽しく、充実したものにしてください!



ありがとうございました!











