
株式会社uyetでは、VTuber業界の発展とともにVTuberを活用して日本産業を発展させるべく、さまざまな企業様や自治体様と取り組みを行っています。
この度、弊社ではカシオ計算機株式会社が手掛ける配信者・リスナー向けスケジューラーWebサービス「Streamer Times」の開発においてサポート・支援を行わせていただきました。
そこで今回は、カシオ計算機株式会社の石崎様と伊藤様をお招きし、uyet代表プロデューサー金井との対談の様子を記事にまとめました。
現在、VTuberを活用したプロモーションを検討している、新規事業の開発を検討している企業、自治体のご担当者様はぜひ本記事をご覧ください。
今回の対談者

写真左:
株式会社uyet代表プロデューサー
金井洸樹
写真真ん中:
カシオ計算機株式会社
石崎浩輔
写真右:
カシオ計算機株式会社
伊藤正樹
カシオ計算機株式会社について

1957年6月設立。時計、教育(一般電卓・関数電卓・ICT学習アプリ・電子辞書)、電子楽器の事業を展開するほか、新規領域においてはAIペットロボットや組込用プロジェクター、医療機器を手がける。
会社公式サイト:https://www.casio.co.jp/
配信スケジュールサービス「Streamer Times」について

「Streamer Times」は、ストリーマーとリスナーをより身近な存在へと導くライブストリーミング専用番組表型仲介プラットフォームWebサービスです。本サービスを利用することで、配信者が視聴者に配信予定日の共有を行えたり、視聴者が配信者の配信予定日を確認したりすることが可能です。
Streamer Times URL:https://streamertimes.casio.com/
事業・商品紹介ページ:https://www.casio.com/jp/creator-economy/
—「Streamer Times」開発チームの中でお二人の担当を教えてください。
石崎:私たちは新規事業「クリエイターエコノミー」の立ち上げ・推進を行う部署に所属しています。クリエイターエコノミーと言えば音楽やライブストリーミング、ゲームなどさまざまな領域があると思いますが、カシオもそういった領域で事業を行っていくということで、ここ最近発足した部署になります。
その中でも企画立案、仕様設計チームに在籍し、私はそこでリーダーを務めております。「Streamer Times」をはじめとするさまざまなプロダクトの企画立案を担当していますね。
伊藤:私はそのチームで仕様設計を担当しており、サービスのUIをどうするかなどを考えながらサービスの上流から実装までの橋渡し役を行っています。
—これまでカシオさんは主に時計や電卓などの領域で高く評価されていると思いますが、「クリエイターエコノミー」領域に進出しようとなった背景はどういったものだったのでしょうか?
石崎:当社の強みの一つとして電子ピアノやキーボードなど鍵盤楽器による「サウンド」事業があるところから「弾く」を広げて、「聴く」「創る」などに通ずる何かを新規事業として取り組めないかと考えていました。また、それと並行してこれまで弊社が手をつけてこなかった領域に事業を広げていきたいと考え、最初に取り掛かったのが「音楽×ライブストリーミング」の領域です。
音楽領域は、私たちがこれまで「鍵盤」を強みとして事業を行ってきたこともあり、非常に関わりの強い領域として、自然な流れで決まりましたね。

一方、ライブストリーミング領域は音楽と親和性が高い領域だったから。
たとえば、VTuberの方の中にはオリジナルソングを作っていたり、配信中に効果音を使用していたりして、VTuber業界は頻繁に音が多用されますよね。それに加えて、ライブストリーミングは非常に成長率の高い市場であり、日本文化としてとても魅力的だと思います。
このような背景があり、カシオでは「音楽×ライブストリーミング」領域に進出することが決定しました。
ちょうど社内にVTuberさんの活動をサポートしている若手社員がおりまして、彼が業界に詳しく、当時「ライブストリーミングの業界内に、配信スケジュールを管理・共有できるサービスがないから不便だ」ということを課題感として持っていました。そこで会社としてこの話を広げてみようという話になり、私たちのチームで本格的に企画検討・開発を行う形になりました。
当時は私も伊藤もこの業界について本当に何も分からなく…試しに配信アプリをダウンロードして配信に遊びに行ってみたのですが、配信に入るたびに挨拶をされて(笑)とても驚きましたね(笑)
伊藤:そんなことありましたね(笑)
石崎:それくらい本当に何もわからない中プロジェクトが始まったのですが、2人で猛勉強して一気に企画をまとめあげました。これはいい思い出ですね。
—弊社にお声がけくださった時は、開発が本格的に始まった頃ですよね。その頃、サービスはどういった状況だったのでしょうか?
石崎:その時は商品の企画・仕様が整い、エンジニアチームで開発が進んで、PoCを始めるかという段階だったかなと思います。ただ業界内にネットワークがなくて、協力してくださるストリーマーさんの当てもなく困っていた頃でした。
伊藤:それまでもユーザーインタビューを実施して「この方向性で合っているのか」のヒアリングは行っていたのですが、しっかり検証を実施するとなると一定数ユーザーを集める必要があって…
当時は、VTuberさんたちのコネクションがあるわけでもないですし、VTuberさんとの間を取り持ってくださる方が存在していることも知りませんでした。
どうしたら大勢のVTuberさんにサービスのテストをしてもらえるのかをリサーチする中で、金井さんを見つけてお話を聞いたのがuyetさんと取り組みを始めるきっかけでしたね。

—VTuber業界に参入するにあたって、この業界に対しては元々どういう印象をお持ちでしたでしょうか?
伊藤:VTuber業界は本当に何もわからなくて「未知の存在」でした。VTuber業界は芸能界に近い印象がある一方で、私たちはモノづくりのメーカーです。もちろんエンタメも一種のモノづくりの業界だと思いますが、大きく異なる文化・ルールだからこそ、最初の一歩に大きな恐怖はありましたね。
石崎:uyetさんとの打ち合わせの際に、金井さんに親身にお話を聞いていただき、安心したのを覚えています。
金井:VTuber業界はまだまだ新しい業界なので、まずは信頼してもらうことを意識してお話しています。
石崎:最初の面談ではやりたいことを伝えて、その上でこれは実現できるのかをひたすら質問させていただきました。その中で金井さんには全ての質問に対して明確にご回答いただき、「この人で間違いない」と感じましたね。
伊藤:金井さんはできないことや違うことをはっきりと「できない」「違う」と言ってくださるので、そういう点に信頼を感じました。今でも初回の打ち合わせの際に話していただいた情報が仕様設計の際に役立っていて、大変ありがたいです。

—金井さんは「Streamer Times」を初めて聞いたとき、どう感じましたか?
金井: 最初にサービスのお話を聞いた時、「なぜカシオさんがこれをやるのか?」と思ったのが正直な感想です。ただお話をする中で、まずVTuber業界に興味を持っていただけたこと、またサービスを通して業界を盛り上げたいという姿勢を非常に感じて嬉しく思い、「是非お力になりたい」と思いました。
石崎:そうだったんですね。uyetさんはVTuberさんとのつながりが多くて、お願いして本当に良かったと思っています。
サービステストを行う上でuyetさんにVTuberさんのキャスティングをお願いしたのですが、今回のテストでは、ユーザーのターゲットを絞らせていただいていたにも関わらず、ターゲットに合うVTuberさんをご紹介いただき、本当にありがたいと思いました。これはuyetさんがVTuberさんとのつながりが多いからこそできることですよね。
金井:弊社では数字だけではなく、配信スタイルや配信者さんの属性など数字では見られない部分も踏まえながらキャスティングを行なっています。たとえば、今回はサービスのテスターのキャスティングだったと思うのですが、実際にテストを行った際にちゃんと感想を言ってくれそうな方は誰だろう?と考えてお繋ぎさせていただきました。
まだ開発段階のサービスだからこそ、そういったところをしっかり見極めてVTuberさんをご紹介させていただきましたね。
—改めて金井さんから、弊社が今回のお取り組みで行わせていただいた内容を教えてください。
金井:大きく分けて2つお手伝いをさせていただいています。
まず1つ目は、サービス開発が進行する中、サービスブラッシュアップを行うなかで、VTuber目線で良いサービスになるよう意見させていただいたり、サービスの設計部分の監修をさせていただいたりしました。2つ目は、サービスのテスターとしてご参加いただけそうなVTuberの方々をご紹介したことです。

—uyetのサポートでよかった点や印象に残っている点はありますか?
伊藤:年末年始に行ったPoCのキャスティングですね。この時期がまさに今回のプロジェクトのターニングポイントになったと思っています。
サービスを開始するにあたり年末年始にPoCを実施したのですが、PoCを行う中で「この状態では絶対に世に出せない」と気づくことができ、本プロジェクトにおいて大きな収穫となったと実感しております。
この時はっきりと物事を言ってくださる方をuyetさんに選定していただいたおかげで、サービスのブラッシュアップに大きく繋がりましたし、ターゲットとなるユーザーが明確になりました。

—キャスティングは金井さんが行われたということですが、どのような観点で選出されたのでしょうか。
金井: 今回は2つの観点を持ってキャスティングさせていただきました。
まずは「活動の軸が明確である方」です。配信活動の軸が曖昧だったり、配信を趣味でやっていたりすると、たとえ便利な機能を使ってもらっても感想がふわっと終わってしまう。よって、ヒアリングをしても具体的な改善点が引き出しにくいんです。その点、活動方針が明確な方は良い点はもちろん、「ここが使いづらい」など改善すべき点もしっかり伝えてくれることが多いです。
2つ目は「忖度なく意見を言える方」です。カシオさんのような大きな企業様だと、サービスのテスターを行っていただくとなった場合、どうしても遠慮が出てしまいがちなんですよね。そうなると欲しい意見が回収できなくてテストの意味がなくなってしまいます。だからこそ、会社名を伝えてもしっかり意見を伝えてくれるであろう方を選ぶようにしました。
石崎:たしかに重要ですね。自分たちでは気づけないところでした。
伊藤:要望は事前に色々お伝えさせていただきましたが、独自に調整もしてくださっていたんですね。全然知らなかったです。
石崎: 今どれくらいの活動者がいるのかなど定量調査を行う中で、これを出しても正しいのかが全く見当がつかないわけで、そのデータの妥当性を金井さんに確認させていただくこともお願いしていましたね。私が業界の知識がない中だったので、そう言ったところは大変助かりました。

金井: 先ほど石崎さんは業界の知見がないとおっしゃられていましたが、私の印象だとカシオさんはこの業界のことをめちゃくちゃ調べてくださっていて、だからこそ私たちも「期待に応えたい」と強く思い、精一杯お手伝いをさせていただきました。
序盤戦の頃はかなり意見させていただきました(笑)「この機能って誰が使うの?」「本当にスケジュール機能って必要なの?」といった率直な意見から投げかけさせていただいたので、結構心配に感じた部分はあります(笑)
伊藤:そこが好印象だと思っています。サービスの作り手としては、やんわりご意見いただくよりは、はっきり言っていただいた方が大変助かります。
金井:発案者の方が「業界内で配信スケジュールをまとめるツールがない」とおっしゃっていたのもまさに事実で、ただ一方で当時は「本当に使われるのか?」という点では確証がなかった。そんな中でテストを実施し、「実際にいる」というところとターゲット層が明確化されてよかったと思っています。
—ブラッシュアップを進める中でサービスの仕様は変化しましたか?
伊藤:かなり変わりましたね。
具体的な話をすると、PoCを行っていた当時はサービスを利用するには色々な情報を登録しないといけなく、「手間がかかりすぎて使いづらい」という声がVTuberさんの中で多数上がりました。
そこでブラッシュアップを行ったところ、想像以上に「使いやすくなった」という声が上がってきて、これであっているんだということがわかりました。ストリーマー向けのサービスだからこそ、本人たちに実際に利用していただくことは本当に大切だと改めて実感しました。
やはり何かを作る時は開発者視点だけで物事を進めてはいけなくて、PoCを行う中で改善の方向性をユーザーに細かく確認しながらブラッシュアップを進めていくことが非常に重要であることがわかりましたね。
石崎:特に、とあるVTuberさんは今でも気軽に相談できる存在になっていて、サービスを開発・運用する上でとても助かっています。

—金井さんはこれまでの取り組みの中で苦労したことはありますか?
金井:そうですね。これはカシオさんに限った話ではないのですが、大きい企業さんとお取り組みをさせていただく際に特に考えているのは「どうしたら市場に受け入れてもらえるか」。
VTuberは今流行のエンタメコンテンツであり、企業・自治体さんの中では「トレンドだからVTuberを活用して何かしたい」とか「トレンドだからプロモーションにVTuberを起用しよう」と考えている方もいらっしゃると思います。
ただカシオさんとプロジェクトを並走する中で、VTuberを単なるトレンドとして扱うのではなく、クリエイターエコノミーやVTuber業界の発展に貢献しようと、ユーザーさんのことを考えながら意義のある取り組みをしたいと強く思われていることをひしひしと感じ、カシオさんが作るこのサービスがどうしたら業界にすんなり受け入れられるのかを考えながらサポートさせていただきました。
良いサービスだからこそ、業界に浸透させる上でどうしたら私たちはお役に立てるのか考えながらお手伝いをさせていただきましたが、特にカシオさんはVTuber業界に対してちゃんとご理解がある企業様なので、様々なご提案をさせていただく中でその点は助かりました。
伊藤:VTuberさんってやはり話し方がとても上手いんですよね。配信ではもちろん、ヒアリングを行わせていただいている際も、こちらの質問に対してわかりやすく回答してくださるだけでなく、ユーモアを交えながらこちらが聞き取りやすい言葉で返してくれる。その時は「やはりVTuberさんはプロだな」と思いました。
石崎:普通はできないですよ。さすがプロです。
金井:VTuberの方ってテスターとして適性が高いと思っています。実際にサービスを触ってみて、相手が知りたいことを想定しながら、サービスの良かった点や違和感があった点をきちんと言葉にして伝えてくれるところは本当に頼りになると思いますね。

—本サービスに関して社内ではどのような反響がありましたか?
伊藤:社内ではこのスピード感でPoCをやりきり、根拠のあるデータを提出できたのは成果だと思っています。
精度高くサービスのユーザー検証ができた点や、VTuberにあまり触れたことがない社内スタッフにサービスの魅力を理解いただけたのは、PoCがあったからこそだと思っています。
—少し唐突かもしれませんが、私たちのチームについての印象をお聞きしてもいいですか?
石崎:人間力とコミュニケーション力が高いチームだと思っています。皆さん話しやすくて、むしろ楽しく話せるような雰囲気を作ってくれる。対人を仕事にするプロだなと感じました。
金井:嬉しいですね。
石崎:余談ですが、金井さんに質問すると必ず2パターンで返ってくるんですよね(笑)「主に2つありまして」と言って、選択肢を提示して私たちに選ばせてくれる。これがとても仕事をしやすいポイントです。
金井:それは初めて知りました(笑)
石崎: あとはVTuber領域で何か困ったことがあれば、「とりあえずuyetさんに相談すれば、何かしらの答えが返ってくる」という安心感があります。
伊藤:困った時の相談相手として、本当に頼もしい存在です。

—2025年8月27日に「Streamer Times」が正式リリースされると思いますが、今後の展望をお伺いしてもいいでしょうか?
石崎:VTuber業界は私たちにとって初めて進出する領域です。だからこそ、まずは業界を盛り上げるところに貢献できればと考えています。
弊社はメーカーでフィジカルな商品の取り扱いが多く、一度販売すると商品の性能を変更することが難しいんです。ですが、こういったサービスは皆さんに使用していただく中でどんどんブラッシュアップができる。それを強みにして、業界の企業さんやストリーマーさん、リスナーさんの声にしっかり耳を傾け、より良いサービスにできるよう継続的にアップデートしていきたいと思っています。
伊藤:最初はライブ配信やVTuberのことも全然知らない状態からのスタートでしたが、今は少しずつ理解が深まってきました。ストリーマーの世界はとても広くて、今たくさんの方が活動されていますが、このサービスを開発する中で細かな部分でストリーマーさんやリスナーさんが必要のない苦労をしている場面も多くあると気が付きました。
例えば、VTuberさんはよく配信スケジュールをXに投稿していると思うのですが、Xのタイムラインはすぐに流れてしまうのでせっかく配信スケジュールを投稿してもリスナーさんの目につかずにスケジュールの共有がうまくいかないことも多いと思います。そういった時に「Streamer Times」が皆さんのお役に立てたら私たちも嬉しく思います。
「Streamer Times」を開発する中で様々なVTuberさんの声を聞かせていただく機会があり、皆さんが苦労されていることを理解しましたし、どう言ったところで困っているのかをより具体的に知ることができました。だからこそ、今後「Streamer Times」をもっと発展させていきたいと思っています。
今は配信スケジュール機能が搭載されたサービスですが、ストリーマーさんをもっとサポートできるようなツールへ成長させていき、「Streamer Times」の存在がVTuber業界に貢献できるものにしたいですね。ストリーマーの皆さんは本当に頑張っていらっしゃって、そういった配信を頑張る皆さんの苦労の部分を少しでも減らせるようなサービスにしていきたい、これが私の夢ですかね。
金井:生配信は楽しい部分もある一方で、すごく大変な部分も多いんですよね。だからこそ、業界内に存在する「大変なこと」をカシオさんと一緒に解決していけたらと思っています。
